上野の森美術館

VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

「VOCA展」30周年記念 VOCA 30 YEARS STORY / KOBE 公式ページはこちら

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VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

The Vision of Contemporary Artの頭文字をとってVOCA(ヴォーカ)展と呼ばれる本展は、全国の美術館学芸員、研究者などに40歳以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方法により、毎年全国各地から未知の優れた才能を紹介している現代美術展です。
今開催で30回目となる「VOCA展」は、平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に1994年より毎年開催し、これまでに延べ1013名(組)の作家が出展。
ここから大きな躍進を遂げる作家を多く輩出しています。
今年も「平面」の可能性を追求した多様な作品をご紹介いたします。

受賞作品

  • VOCA賞 永沢 碧衣
    やまごろもをほどく」

    アクリルガッシュ・岩絵具・熊膠・墨汁・ティッシュ、カンヴァス・木製パネル
    249.5×399×4.5cm

選考所感

家村珠代 (選考委員長/多摩美術大学教授)

今年のVOCA賞は、2年連続で絵画作品の受賞となった。とはいえ、「作品の厚さは、壁から20cm以内」という出品規定を駆使した半立体作品が今年も多数を占めた。印象的だったのは、熊膠をもちい山と熊を描いたVOCA賞の永沢碧衣、セラミック、ドローイング、詩を並列することで歩きながらの思索の体験を作品化した奨励賞のエレナ・トゥタッチコワ、石膏を素材に波の運動を引搔きや刻み込みにより表出した、同じく奨励賞となった七搦綾乃の彫刻ともドローイングともいえるような作品など、素材や表現方法は異なるものの、自然のフィールドワークから世界との関係性をきり結ぼうとする秀逸な作品が見られたことであった。

荒木夏実 (東京藝術大学准教授)

VOCAの審査はいつも心が揺れる。作品の力を十分に発揮できている作家は誰か。巧みさだけではなくそれを突き破る新たな方向にチャレンジしているだろうか。審査員一人一人が作品を熟視した上で意見を交わし、さらに展示会場に戻って作品数を絞るという手順を繰り返す。見る、考える、他者と意見を交わす。自分自身の目と思考が試される。このプロセス自体がアートという行為ではないかと思う。苦しくも楽しい審査の時間を経て選ばれた受賞作品は、いずれも今後の発展が大いに期待できる潜在力に溢れたものだと感じている。

植松由佳 (国立国際美術館学芸課長)

今回も平面ではあるが多様な表現による作品が多く、難しい審査であった。それでもVOCA賞他の受賞作品はいずれも選考当初より選考委員からの評価を集めていたように思う。私たち人間と自然とのあり様を東北の山野に分け入りながら熊をモチーフに表現したVOCA賞受賞の永沢碧衣、また奨励賞受賞のフィードワールド的な行為を経て陶芸という自らの痕跡を作品に示したエレナ・トゥタッチコワ、彫刻という技法を根幹に平面的な表現を探究した七搦綾乃は、特に印象に残った。

川浪千鶴 (インディペンデント・キュレーター)

コロナ禍が促した内省の反動なのか、思考停止気味で性急な言動が目につく昨今。しかし本展受賞者たちは、自分の身体と感覚を手放すことなく思索を深め、揺れ動きながら世界に開く行為を丁寧に積み重ねている。狩られた熊を主題と画材に、時空を超えた循環を紐解く永沢碧衣。彫刻と絵画のあわいを共振させる七搦綾乃。陶土を扱う手と心の動きを繊細にシンクロさせたエレナ・トゥタッチコワ。彼女たちの作品の余韻は深く長い。

前山裕司 (新潟市美術館館長)

VOCA展の副題は「新しい平面の作家たち」である。今年はその「平面」の多様性を感じる審査だった。それは受賞作を見ればわかる。陶や衣服が、厚さ20cmという応募条件を活かした作品であるのは言うまでもない。だが、絵画的な作品も実は一筋縄ではいかない。制作の背景に類例のないアプローチがあるもの。考え抜かれた彫刻的な手法による平面。いまその答えを明かすような愚かしいことはしない。作品に向き合い、技法・素材、解説を確認していただきたい。

作家・推薦委員一覧

「VOCA展2023」の出品作家29名が決定しました。作家と推薦委員は下記のとおりです。

(敬称略)

作家名 推薦者名
赤羽 史亮 桝田 倫広 東京国立近代美術館
天野 祐子 正路 佐知子 福岡市美術館
岩名 泰岳 大槻 晃実 芦屋市立美術博物館
上野 友幸 吉崎 和彦 山口情報芸術センター
上野 洋嗣 坂本 顕子 熊本市現代美術館
内田 聖良 慶野 結香 青森公立大学 国際芸術センター青森
遠藤 美香 仙座 桃子 上野の森美術館
菊池 聡太朗 小原 真史 東京工芸大学
北上 奈生子 亀海 史明 沖縄県立博物館・美術館
木谷 優太 中村 史子 愛知県美術館
金藤 みなみ 毛利 直子 高松市美術館
黒山 真央 藤川 悠 茅ヶ崎市美術館
源馬 菜穂 木内 真由美 長野県立美術館
興梠 優護 山本 麻友美 京都芸術センター
小林 知世 樋泉 綾子 札幌文化芸術交流センターSCARTS
小宮 太郎 荒井 保洋 滋賀県立美術館
地主 麻衣子 赤井 あずみ 鳥取県立博物館
田中 藍衣 鈴木 俊晴 豊田市美術館
田中 秀介 小林 公 兵庫県立美術館
築山 弘毅 岸本 和明 奈義町現代美術館
都築 崇広 秋田 美緒 国立西洋美術館
エレナ・トゥタッチコワ 大澤 紗蓉子 横浜美術館
崔 敬華 東京都現代美術館
永沢 碧衣 石倉 敏明 秋田公立美術大学
中村 愛子 立花 由美子 静岡大学
七搦 綾乃 原田 真紀 インディペンデント・キュレーター
畑山 太志 中尾 拓哉 美術評論家
宮内 由梨 内海 潤也 アーティゾン美術館
横山 奈美 森 啓輔 千葉市美術館
Ryu Ika 伊藤 貴弘 東京都写真美術館

VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

会場
上野の森美術館
会期
2023年3月16日(木)3月30日(木)[15日間]
休館
会期中無休
時間
10:00 〜 17:00
*入場は閉館30分前まで
入館料
一般 800円(税込) / 大学生 400円(税込) / 高校生以下無料
*学生の方は、学生証・生徒手帳をご提示ください *障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料 (要証明)
企画券
ペア券 1,300円(税込)
VOCA展2023 入場券2枚セット販売となり、お二人で入場の方、またはお一人で会期中2回入場いただく方にお得なチケットです。
*販売期間 2023年1月6日(金)10:00~3月15日(水)23:59
主催
「VOCA展」実行委員会/(公財)日本美術協会 上野の森美術館
特別協賛
第一生命保険株式会社
選考委員
家村 珠代(選考委員長/多摩美術大学教授)
荒木 夏実(東京藝術大学准教授)
植松 由佳(国立国際美術館学芸課長)
川浪 千鶴(インディペンデント・キュレーター)
前山 裕司(新潟市美術館館長)

VOCA展出品規定

関連イベント情報

同時開催 平面≠絵画 〜絵画と平面の境界線〜

日時 3月16日(木) ~ 30日(木) 10:00~17:00
場所 上野の森美術館ギャラリー
出品作家(予定) 駒形 克哉 (1995年VOCA奨励賞)、鈴木 基真 (2017年VOCA奨励賞)、照屋 勇賢 (2002年VOCA奨励賞)、竹村 京 (2009年VOCA奨励賞)

VOCA展はこれまで出品サイズの規定の範囲で素材や構成を工夫した様々な作品が登場してきました。本展ではVOCA奨励賞を受賞し第一生命が所蔵する作品の中から、立体やインスタレーションに近い作品を選び、平面作品の可能性を探ることを主旨としてきたVOCA展の30年を振り返ります。

VOCA30周年記念シンポジウム「これまでと今」

パネリスト 植松 由佳、荒木 夏実、川浪 千鶴、前山 裕司、永沢 碧衣、エレナ・トゥタッチコワ、黒山 真央、田中 藍衣
日時 2023年3月15日(水) 15:00~17:00
定員50名(要申込)

シンポジウムお申込み

下記の専用フォームよりお申し込みください。
定員となり次第、締め切らせていただきます。

シンポジウムお申し込みはこちら

受賞者インタビュー

受賞者インタビューを展覧会HP上で公開します

東京・春・音楽祭 ミュージアム・コンサート

今年も-東京オペラの森2022—のプログラムとして、VOCA展展示室内で行うミュージアム・コンサートを開催する予定です。
現代美術の展示される会場で聴く現代音楽は普段では味わえない格別な時間をお届けいたします。

※チケットのご購入等、詳しくは音楽祭の公式HPをご参照ください

「第一生命ロビー」展示

場所:東京都千代田区有楽町1-13-1 第一生命保険株式会社 日比谷本社1F

第一生命が所蔵するVOCA作家の受賞作品を展示いたします。

展覧会名 会期
「V」 〜VOCA の Venus(女神)たち〜 2023年3月16日(木) ~ 11月30日(木) 8:00〜20:00
*無料・無休

お知らせ

VOCA30周年記念 1994-2023
VOCA 30 YEARS STORY / KOBE

1994年にスタートした「VOCA展」は、2023年で30回の節目を迎えます。これを機に、VOCA賞の30作品を一堂に会す記念展を神戸にて開催します。

会期
2023年3月9日(木) 〜 3月25日(土)
*休館 月曜日
時間
10:00 〜 17:30
*最終入場は閉館 30分前まで
会場
兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリー
兵庫県神戸市灘区原田通 3-8-30
入場料
一般800円、大学生400円、高校生以下無料
主催
(公財)日本美術協会 上野の森美術館
後援
兵庫県、(公財)兵庫県芸術文化協会、神戸新聞社
特別協力
第一生命保険株式会社
協力
ヤマト運輸株式会社

*本展の情報はこちらをご覧ください。