横内 賢太郎 | 「Book-CHRI IMOCE」「Book-CHRI FFTC」 染料、メディウム、サテン布 |
今回の作品はあるオークションカタログに載っていた、18世紀頃の二枚のタペストリーをモチーフにしています。ひとつは神話を、もうひとつはパゴダ(東洋風の仏塔)のある風景が織り描かれています。しかしそれらは、もともと同じ物差し──単一的な価値観によって織りなされているように思えます。 私の作品は、これらのモチーフを「絵画」という表象の上で変質させることによって、「私の絵/絵画とは何か」という問いに向かう試みでもあります。
私の制作はいくつかのフレームを受け入れることから始まります。
一つは「絵画の歴史」が引き寄せる、文化史的な問題を含む「Painting/絵画」というもの。もう一つは欧米のオークションカタログという欲望の視線の文脈のこと。これらのことは日本に暮らすなかで度々感じざるを得ない、既存の価値体系のことだと言えます。
このフレームは、気を留めなければ過ぎ去ってしまう無意識の判断に多くを因っていると言えますが、それらを一度停止(麻痺)させ、あらためて受け入れる準備をしたいと思います。そうすることで、いわば「名前/認識」によってはじかれたざわつく感覚をすくい上げることや、ある人間(わたし自身)の物差しを変質させることができるのではないだろうか。例えばネガティブな色彩変換などの反転の思考回路によって、そのことに臨めるのではないかと考えています。
私の試みは、自分はどのようにフレームを受け入れることができ、あるいはまた自分の絵画はどのようなフレームのなかに受け入れられ、その上でさらに血の通った表現を生み出すことができるのかを模索することです。それは、すでに知っているようで未だ判然としない、ある感覚をつかまえるようなことだと言えます。
川上 幸之介 | 「Resort 3」 「Combined pumping station and dry cooling tower」 ミクストメディア、キャンバス |
岩熊 力也 | 「reverb(祈る手殺める手、兎、野犬、鳥)」 「reverb(群れ、女)」 アクリル、ポリエステル |
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