■京都市京セラ美術館
[2023 春期]コレクションルーム 特集「魅惑の昭和モダン」
VOCA展の特別協賛会社である第一生命保険株式会社は、所蔵していたVOCA奨励賞受賞作品のなかから、
9名の作品を2020年に京都市京セラ美術館に寄贈しました。
この度「VOCA展2023」(上野 3/16~30)と、「VOCA 30 YEARS STORY / KOBE展」(神戸 3/9~25)
の開催時期にあわせ、上記のコレクションルームにて、小企画「VOCA展 30周年によせて」が開催され、この9作品全点が展示されます。
展覧会名:[2023 春期]コレクションルーム 特集「魅惑の昭和モダン」
小企画「VOCA展 30周年によせて」
会期: 2023年3月10日~6月18日
会場: 京都市京セラ美術館 本館 南回廊1階
出品作品:
1997年VOCA奨励賞 東郷靖彦《SPRAWL》
1998年VOCA奨励賞 岡田修二《Take #10》
2000年VOCA奨励賞 坂井淑恵《明るい所》
2000年VOCA奨励賞 内藤絹子《祈りの言葉1999.11》
2003年VOCA奨励賞 岩城直美《View-Barn-/View-Red Roof-》
2004年VOCA奨励賞 小柳 裕《ETHER-House of a back alley-/ETHER-Distant lights-》
2005年VOCA奨励賞 中川トラヲ《風が吹いて そして すべて終わりさ》
2005年VOCA奨励賞 居城純子《N34.12.29 E135.52.13》
2006年VOCA奨励賞 ロバート・プラット《Rendezvous》
お得なペア券もあります。
The Vision of Contemporary Artの頭文字をとってVOCA(ヴォーカ)展と呼ばれる本展は、全国の美術館学芸員、研究者などに40歳以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方法により、毎年全国各地から未知の優れた才能を紹介している現代美術展です。
今開催で30回目となる「VOCA展」は、平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に1994年より毎年開催し、これまでに延べ1013名(組)の作家が出展。
ここから大きな躍進を遂げる作家を多く輩出しています。
今年も「平面」の可能性を追求した多様な作品をご紹介いたします。
VOCA賞 永沢 碧衣
「山衣をほどく」
アクリルガッシュ・岩絵具・熊膠・墨汁・ティッシュ、カンヴァス・木製パネル
249.5×399×4.5cm
今年のVOCA賞は、2年連続で絵画作品の受賞となった。とはいえ、「作品の厚さは、壁から20cm以内」という出品規定を駆使した半立体作品が今年も多数を占めた。印象的だったのは、熊膠をもちい山と熊を描いたVOCA賞の永沢碧衣、セラミック、ドローイング、詩を並列することで歩きながらの思索の体験を作品化した奨励賞のエレナ・トゥタッチコワ、石膏を素材に波の運動を引搔きや刻み込みにより表出した、同じく奨励賞となった七搦綾乃の彫刻ともドローイングともいえるような作品など、素材や表現方法は異なるものの、自然のフィールドワークから世界との関係性をきり結ぼうとする秀逸な作品が見られたことであった。
VOCAの審査はいつも心が揺れる。作品の力を十分に発揮できている作家は誰か。巧みさだけではなくそれを突き破る新たな方向にチャレンジしているだろうか。審査員一人一人が作品を熟視した上で意見を交わし、さらに展示会場に戻って作品数を絞るという手順を繰り返す。見る、考える、他者と意見を交わす。自分自身の目と思考が試される。このプロセス自体がアートという行為ではないかと思う。苦しくも楽しい審査の時間を経て選ばれた受賞作品は、いずれも今後の発展が大いに期待できる潜在力に溢れたものだと感じている。
今回も平面ではあるが多様な表現による作品が多く、難しい審査であった。それでもVOCA賞他の受賞作品はいずれも選考当初より選考委員からの評価を集めていたように思う。私たち人間と自然とのあり様を東北の山野に分け入りながら熊をモチーフに表現したVOCA賞受賞の永沢碧衣、また奨励賞受賞のフィードワールド的な行為を経て陶芸という自らの痕跡を作品に示したエレナ・トゥタッチコワ、彫刻という技法を根幹に平面的な表現を探究した七搦綾乃は、特に印象に残った。
コロナ禍が促した内省の反動なのか、思考停止気味で性急な言動が目につく昨今。しかし本展受賞者たちは、自分の身体と感覚を手放すことなく思索を深め、揺れ動きながら世界に開く行為を丁寧に積み重ねている。狩られた熊を主題と画材に、時空を超えた循環を紐解く永沢碧衣。彫刻と絵画のあわいを共振させる七搦綾乃。陶土を扱う手と心の動きを繊細にシンクロさせたエレナ・トゥタッチコワ。彼女たちの作品の余韻は深く長い。
VOCA展の副題は「新しい平面の作家たち」である。今年はその「平面」の多様性を感じる審査だった。それは受賞作を見ればわかる。陶や衣服が、厚さ20cmという応募条件を活かした作品であるのは言うまでもない。だが、絵画的な作品も実は一筋縄ではいかない。制作の背景に類例のないアプローチがあるもの。考え抜かれた彫刻的な手法による平面。いまその答えを明かすような愚かしいことはしない。作品に向き合い、技法・素材、解説を確認していただきたい。
「VOCA展2023」の出品作家29名が決定しました。作家と推薦委員は下記のとおりです。
(敬称略)
作家名 | 推薦者名 | |
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赤羽 史亮 | 桝田 倫広 | 東京国立近代美術館 |
天野 祐子 | 正路 佐知子 | 福岡市美術館 |
岩名 泰岳 | 大槻 晃実 | 芦屋市立美術博物館 |
上野 友幸 | 吉崎 和彦 | 山口情報芸術センター |
上野 洋嗣 | 坂本 顕子 | 熊本市現代美術館 |
内田 聖良 | 慶野 結香 | 青森公立大学 国際芸術センター青森 |
遠藤 美香 | 仙座 桃子 | 上野の森美術館 |
菊池 聡太朗 | 小原 真史 | 東京工芸大学 |
北上 奈生子 | 亀海 史明 | 沖縄県立博物館・美術館 |
木谷 優太 | 中村 史子 | 愛知県美術館 |
金藤 みなみ | 毛利 直子 | 高松市美術館 |
黒山 真央 | 藤川 悠 | 茅ヶ崎市美術館 |
源馬 菜穂 | 木内 真由美 | 長野県立美術館 |
興梠 優護 | 山本 麻友美 | 京都芸術センター |
小林 知世 | 樋泉 綾子 | 札幌文化芸術交流センターSCARTS |
小宮 太郎 | 荒井 保洋 | 滋賀県立美術館 |
地主 麻衣子 | 赤井 あずみ | 鳥取県立博物館 |
田中 藍衣 | 鈴木 俊晴 | 豊田市美術館 |
田中 秀介 | 小林 公 | 兵庫県立美術館 |
築山 弘毅 | 岸本 和明 | 奈義町現代美術館 |
都築 崇広 | 秋田 美緒 | 国立西洋美術館 |
エレナ・トゥタッチコワ | 大澤 紗蓉子 | 横浜美術館 |
崔 敬華 | 東京都現代美術館 | |
永沢 碧衣 | 石倉 敏明 | 秋田公立美術大学 |
中村 愛子 | 立花 由美子 | 静岡大学 |
七搦 綾乃 | 原田 真紀 | インディペンデント・キュレーター |
畑山 太志 | 中尾 拓哉 | 美術評論家 |
宮内 由梨 | 内海 潤也 | アーティゾン美術館 |
横山 奈美 | 森 啓輔 | 千葉市美術館 |
Ryu Ika | 伊藤 貴弘 | 東京都写真美術館 |
日時 | 3月16日(木) ~ 30日(木) 10:00~17:00 |
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場所 | 上野の森美術館ギャラリー |
出品作家(予定) | 駒形 克哉 (1995年VOCA奨励賞)、鈴木 基真 (2017年VOCA奨励賞)、照屋 勇賢 (2002年VOCA奨励賞)、竹村 京 (2009年VOCA奨励賞) |
VOCA展はこれまで出品サイズの規定の範囲で素材や構成を工夫した様々な作品が登場してきました。本展ではVOCA奨励賞を受賞し第一生命が所蔵する作品の中から、立体やインスタレーションに近い作品を選び、平面作品の可能性を探ることを主旨としてきたVOCA展の30年を振り返ります。
パネリスト | 植松 由佳、荒木 夏実、川浪 千鶴、前山 裕司、永沢 碧衣、エレナ・トゥタッチコワ、黒山 真央、田中 藍衣 |
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日時 | 2023年3月15日(水) 15:00~17:00 |
定員 | 50名(要申込) |
下記の専用フォームよりお申し込みください。
定員となり次第、締め切らせていただきます。
受賞者インタビューを展覧会HP上で公開します
今年も-東京オペラの森2022—のプログラムとして、VOCA展展示室内で行うミュージアム・コンサートを開催する予定です。
現代美術の展示される会場で聴く現代音楽は普段では味わえない格別な時間をお届けいたします。
※チケットのご購入等、詳しくは音楽祭の公式HPをご参照ください。
場所:東京都千代田区有楽町1-13-1 第一生命保険株式会社 日比谷本社1F
第一生命が所蔵するVOCA作家の受賞作品を展示いたします。
展覧会名 | 会期 |
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「V」 〜VOCA の Venus(女神)たち〜 |
2023年3月16日(木) ~ 11月30日(木) 8:00〜20:00 *無料・無休 |
1994年にスタートした「VOCA展」は、2023年で30回の節目を迎えます。これを機に、VOCA賞の30作品を一堂に会す記念展を神戸にて開催します。