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現代美術の展望 VOCA展 —新しい平面の作家たち—
「VOCA展」におけるハラスメント防止のためのガイドライン
2024年5月25日策定
7月1日更新
「VOCA展」実行委員会
Ⅰ 全体
1.目的
主催者である上野の森美術館と特別協賛者である第一生命保険株式会社が組織する「VOCA展 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(以下「VOCA展」という)実行委員会は、VOCA展に関係する人々の人権を守り、各人がお互いを尊重しながら創作活動や評論活動、職務を行うための自由で安全な環境づくりを目指します。そのために、さまざまなハラスメント(以下「ハラスメント等」という)の発生の防止を目的としてこのガイドラインを制定します。
2.基本方針
「VOCA展」実行委員会は、VOCA展の継続的な開催により、平面の領域で活躍が期待される若手作家を全国各地から選出し、顕彰、支援すること、さらに現代美術の振興に寄与することを目的とする組織として、VOCA展に関係する人々の尊厳と安全を脅かすあらゆる人権侵害やハラスメントを容認しません。VOCA展の開催にあたりハラスメント等を発生させないよう努めます。
3.適用範囲
本ガイドラインは、VOCA展の開催および運営に関わる関係者と活動に適用されます。
関係者とは、VOCA展実行委員、選考委員、上野の森美術館「VOCA展」事務局(以下「事務局」という)のスタッフ、推薦委員、出品作家(以下「作家」という)および以下に記したVOCA展の活動に関わるすべての人を指します。
VOCA展の開催及び運営に関する活動とは、実行委員会による選考委員や推薦委員の選出、推薦委員による作家の推薦と推薦文の執筆、作家による作品の制作と出品、選考委員による受賞作品の選考や選考評の執筆、展覧会および関連するイベントの開催、事務局がおこなう運営上の諸手続きや問い合わせ対応、広報活動などを指します。
なお、一人の推薦者が一人(組)の作家を推薦するというVOCA展の仕組みにおいて、推薦委員と作家が適切な関係を築けるよう、推薦委員がハラスメントの防止のために遵守すべき事項については、「Ⅱ 推薦委員の行動規範」で定めます。
4.ハラスメントとは
本ガイドラインに基づくハラスメントとは、本人の意図にかかわらず、正当な根拠なく相手に不利益や脅威を与えるなど、VOCA展の関係者の権利や尊厳を侵害し、自由で健全な環境を損なう発言や行為を指します。
例えば、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメント、レイシャルハラスメントなどを指します。
(ここではこの5つをハラスメントの類型として示しますが、これらに限るものではありません)。
-
1)セクシャルハラスメント
相手の意に反する性的な言動により、相手に不利益や精神的苦痛などを与えること
また、性別による役割意識に基づいた言動により平等な環境を損なうこと -
2)パワーハラスメント
職務上優位な立場にある者、あるいは人間関係においてより大きな力を持つ者がその権力を利用して行う、相手の就労や活動の権利や意欲を侵害したり、人格的な尊厳を傷つけたりする不適切で不当な言動や指導、待遇 -
3)アカデミックハラスメント
教育・研究上優位な立場にある者がその地位や権力を利用して行う、相手の教育、研究、制作や活動の権利や意欲を侵害したり、人格的な尊厳を傷つけたりする不適切で不当な言動や指導 -
4)モラルハラスメント
当事者の立場に特に関係なく、直接的な暴言・叱責などのほか、文書やメール、Web上での誹謗・中傷、悪意ある妨害など、相手に精神的苦痛を与えたり、就労や活動の状況を悪化させる行為 -
5)レイシャルハラスメント
民族、人種、国籍、宗教、思想・信条などを理由として生じる、配慮に欠けた、差別的あるいは不適切な発言や行為
5.ハラスメントの事例
以下に事例を挙げるとともに、このような行為を固く禁じます。
- 立場を利用して交際や性的関係を迫ったり、つきまとったりすること
- 過度な連絡や呼び出し、やりとりをすること
- 正当な理由なく金銭を要求すること
- 無償労働をさせること
- 出品作品や展示、運営などに関して主催者(上野の森美術館)の判断や協力要請に応じず、展覧会の正常で安全な開催を阻害すること
- VOCA展や関係者について、事実に反する話や不当な評価、悪意のある発言などをすることで(Web上の発言を含む)、展覧会の正常で安全な開催を阻害すること
- 立場を利用して推薦委員の作家推薦に介入すること
- 作家が希望しないにもかかわらず、VOCA展への出品作品の構想や制作に介入すること
- 作家の私生活や家庭環境など個人情報を過度に収集すること
- 正当な理由なく作家に作品の貸与や贈与を求めたり促したりすること
- 作家の推薦もしくは選考を、自身ならびにその関係者の商用活動のために利用すること
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正当な理由なく作家の推薦を取り消すこと
(*作家は、実行委員会が推薦委員の推薦にもとづき出品を依頼した時点で出品者としての資格を有します『開催要項 4 出品作家』) - 正当な理由なく受賞選考を取り消すこと
- その他、法令に違反する行為や相手の意に反する行為を強いること等、本ガイドラインの基本方針を踏まえ実行委員会が不適切と認めた行為
6.ガイドラインの周知・対策
「VOCA展」実行委員会では、本ガイドラインの内容の、関係者への周知を徹底し、必要な対策を講じながら関係者によるハラスメント等の防止に努めます。
7.相談窓口の設置
「VOCA展」実行委員会は、VOCA展にかかるハラスメント等について、関係者の相談・報告のための窓口を事務局内に設置し、問題解決のために適切に対応いたします。
相談窓口:
上野の森美術館「VOCA展」事務局
soudan@ueno-mori.org
8.相談・報告者等の保護および不利益な取扱い等の禁止
すべての関係者は、相談・報告者が、正当な相談・報告を行ったこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いをしてはなりません。
相談窓口担当者は、個人情報の保護に関する法律等の関連法令を遵守するとともに、相談者の守秘性、匿名性や意向を十分に配慮し、相談・報告に係わる情報および調査で知り得た情報を正当な理由なく漏洩したり、当該相談・報告にかかる問題の解決以外の目的で利用してはなりません。
Ⅱ 推薦委員の行動規範
1.趣旨
1994年に創設された「VOCA展」は、全国の美術館学芸員、研究者などに40歳以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が未発表の平面作品を出品するという方式により、毎年全国各地から未知の優れた才能を紹介してきました。ここから大きな躍進を遂げる作家も数多く輩出しています。
一人の推薦者が一人(組)の作家を推薦し、推薦者と作家が協力しながら出品する仕組みがVOCA展のユニークな点であり、この仕組みにより、多彩な推薦者の視点を採り入れながら、まだ無名の作家や地方の優れた作家をこれまで幅ひろく紹介してきたと考えます。
推薦者は作家の力強い支援者である一方で、推薦された作家は全員出品できることから、推薦者と作家のあいだに上下関係が生まれ、作家が推薦者にたいして自身の意思を表明できない可能性も出てきます。
よって、「I 全体」に示した事項に加えて、推薦委員がハラスメント防止のために遵守すべき行動規範をここに示します。本規範は推薦委員と作家の両者が参照し、ハラスメント等の問題が起きないようにするためのものです。
VOCA展独自の仕組みが健全に持続・発展し、推薦委員と作家が適切な関係を築きながら、若手作家の未来に寄与するよう、みなさまのご協力をお願い申し上げます。
2.基本姿勢
推薦委員は作家に対して優位な立場になり得るという意識を持ち、つねに作家の自由な意思を尊重しながら接する。
3.任期
推薦委員は1年ごとの更新とし、任期は、実行委員会より委嘱をされた時点から当該年度末までとする。
(※作家に対し、当該年度以降の将来に推薦委員を務める、あるいは可能性があるといった説明はしないこと)
4.推薦について
- 実行委員会から依頼書『推薦委員の委嘱について』を受領後、諾否を返信する。推薦委員を受嘱する場合、まず「承諾書」を返送したあと、期日までに「推薦書」を提出すること。
- 推薦書で推薦された作家へは、最初に事務局から書面で出品依頼をし、作家から出品諾否の返信を受領しだい推薦委員に通知する。それまで作家へ直接連絡をとることは控えること。
- 出品決定後、作家とやりとりする場合には、本ガイドラインの各項目を遵守し行動すること。
[その他]
その他のハラスメント防止における禁止事項については、「I 全体」の第5項「ハラスメントの事例」に記載のとおり。