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■構成

1.18世紀ヴェネツィアの「現実」
18世紀ヴェネツィアの「現実」を再現した作品を集める第1部は、3つのセクションからなる。

  第1のセクション 「都市景観画(ヴェドゥータ)と奇想画(カプリッチョ)」 では、カナレットやグアルディらの街の様子を正確に引き写 した様な「ヴェドゥータ(都市景観画)」と 実際の風景と古代の廃墟を組み合わせるなどした「カプリッチョ」(奇想画)を展示する。

 第2セクション 「祝祭と生活」 では、都市そのものが「芸術作品」であり、祝祭都市であったヴェネツィアの、都市としての魅力的な イントロダクションとなるにちがいない。祝祭の部分では、ストームの大画面 が中心となる。また、 生活の部分では18世紀ヴェネツィア貴族の生活や風俗を描いたピエトロ・ロンギの「風俗画」が中心となる。

 第3セクション 「田園とアルカディア」 では、ズッカレリとザイスの田園風景を描いた「風景画」を展示する。ここでは風景はアルカディア(理想郷) の色合いを帯びている。ヴィヴァルディの「四季」の世界と共通 する世界である。

2.18世紀ヴェネツィアの「幻想」
 18世紀ヴェネツィア絵画の「幻想」を表現した作品を展示する第2部は、 「信仰と神話」と題して展示する。ジャンバッティスタ・ティエポロやピアツェッタなど物語画、聖書や古代神話に取材したファンタジーアにあふれた作品を展示する。また、セバスティアーノ・リッチやピットーニなどのロココ風の作品などが並ぶ。


■「ヴェネツィア絵画展」に寄せて
成城大学教授 石鍋 真澄

 ヴェネツィア絵画の歴史において、ティエポロを代表とする18世紀は、ティツィアーノやヴェロネーゼの時代、つまり16世紀(ルネサンス)に次ぐ、栄光の世紀であった。たとえば、英国のロイヤル・アカデミーで1983年から84年にかけて行われたヴェネツィア・ルネサンス美術展は、「ヴェネツィアの天才、1500-1600」と題され、その延長線上で1994年に開かれた18世紀美術展は、「ヴェネツィアの栄光、18世紀の美術」と銘打たれた。ワシントンやヴェネツィアでも同様の展覧会が開かれ、見事な成功を収めた。8世紀ヴェネツィア絵画に対する評価はすでに確立しているが、人々の関心と評価はますます高くなっている。実際、18世紀ロココ絵画というと、フランスが中心に語られてきたが、ヴェネツィア絵画がフランス絵画と変わらない重要性をもつことは、今日広く認められている。残念ながら、日本では、まとまった展覧会はおろか、きちんとした紹介もされていない。作曲家ヴィヴァルディ、色事師カサノーヴァ、そして劇作家ゴルドーニを生み、カフェの文化や劇場文化、さらには賭博などのさまざまなヨーロッパ文化の発信地であった18世紀のヴェネツィアは、まさに注目に値する。爛熟した文化が栄えた18世紀ヴェネツィアは、いい意味でも悪い意味でも、現代の日本や欧米に通 ずるところがあり、ヴェネツィア文化への関心は、ますます高まっている。もちろん、18世紀ヴェネツィア絵画は、それ自体すばらしい。聖書や神話の物語を描いた「物語画」から、風景画、都市景観画(ヴェドゥータ)、風俗画や肖像画、とジャンルも広く、すぐれた画家たちが輩出している。美術展としての価値、水準の高さは、申し分のないものになるに違いない。展覧会では、各ジャンルを網羅し、18世紀ヴェネツィア絵画を概観できるようにする。


石鍋真澄 1949年埼玉生まれ。1975年東北大学大学院研究科修士課程修了、フィレンツェ大学留学。1979年帰国後、成城短期大学専任講師就任、現在同大学教授。専門はイタリア美術。主著に「ベルニーニ」「聖母の都市シエナ」「サン・ピエトロの立つかぎり」「ありがとうジョット」「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」「サン・ピエトロ大聖堂」など。また、展覧会監修なども多数あり。



 

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